患者さんや地域、世の中の流れに合わせた診療
お父様が開設していた医院も当時から予防の大切さを指標にしていたと聞いております。移転開業してお父様の代と比べて現在の患者さんのニーズの変化、診療傾向の変化を教えてください。
義隆院長:
虫歯や予防、歯ならびに対する意識が全体的に高まってきています。歯周病治療に関しても、マスメディアなどの影響でニーズが増えてきています。
将隆先生:
当院はバリアフリーで、車イスで入れるトイレもあります。現在、足利は高齢化率が約30%で、全国平均の25%に比べ、高齢化が進んでいる地域であるため、要介護者の方々の治療が増えています。
また、地域社会の在り方を見ていて訪問歯科のニーズ・必要性を感じます。
左から、文隆先生、義隆院長、将隆先生
患者さんのライフステージ(年齢・立場・職業)に合わせた治療・予防をどのように実践していますか?
義隆院長:
患者さんとのコミュニケーション、問診を非常に大事にしています。歯科医師だけでなく、受付や衛生士も含めた全員が一丸となって患者さんの状態が捉えられるように努めています。
将隆先生:
赤ちゃんの咬合育成やむし歯治療は、出生直後から行います。それと同時にお母さんに対するご説明もさせていただいています。もちろん、赤ちゃんだけでなくライフステージに合わせての咬合育成やむし歯治療も行っています。中高年の方は、歯周病の予防治療が主訴になります。また、咬合に関する機能回復も重要です。高齢者の方は入れ歯が主な治療ですね。都市部に比べて入れ歯の患者さんは非常に多いですから、どれだけ満足していただけるかというのを重要視しています。
歯科も全身との兼ね合いを要求される時代になりましたが、文隆先生は群馬大学の口腔外科にご勤務とのことですが、基礎疾患(高血圧症・高脂血症・糖尿病等)を抱えている患者さんの診診連携について教えてください。
文隆先生:
高齢化社会の現在、大抵の方が何らかの基礎疾患を持っています。患者さんごとの全身的な所見、薬の影響なども考慮し、口と歯だけからでなく口腔を体の中の一部として捉えることが重要です。さらに、医科との連携を強め、より安全な歯科治療に努めています。
お口の中だけでなく、患者さんの全身の健康管理に努めます。
定期的なメンテナンスが可能であれば、インプラントはおすすめ
義隆先生は日本歯周病学会の認定医であり、歯周病治療を専門とされていると聞いておりますが、興味を持たれたきっかけを教えてください。
義隆院長:
大学を卒業して勤務医になったものの、まだまだ未熟でした。当時、私が担当していた患者さんの歯周病治療が上手くいかず、結局抜歯することになってしまったケースもありました。そのような経験から、歯周病治療の難しさを痛感し、より深く勉強するようになりました。
歯周病には予防・メンテナンスが
効果的です。
患者さんへのインプラントと入れ歯の提案をする時の基準を教えてください。
義隆院長:
基本的には、お口の中の病気を完全になくした状態で、インプラントを入れられるかというのを基準にしています。ですから、歯周病がきちんとコントロールできる患者さんに「噛みたい」という願望があれば、インプラントはおすすめですね。
将隆先生:
私は主に入れ歯を担当していますが、両方共に治療が可能な場合は患者さんのライフステージに合わせたご提案をしています。患者さんがその後の人生をどのように送りたいのか、というのが非常に関係していると思います。
インプラントを一生持たせたい、今のところは入れ歯でもう少し歳を取ってから考えたい、などの様々なケースがあります。また、現在は認知症の問題がかなり大きくなってきており、ご自身でメンテナンスができなくなることも考慮しなければなりません。ですから、患者さんがメンテナンスを定期的に受けられるかどうかというのが重要です。当院も患者さんと一生のお付き合いをするつもりで治療を行います。もちろん、入れ歯も悪いわけではなく、しっかりとした治療を行えば、充分に咬める患者さんは多いですよ。ですから、これらのことを全てお伝えした上で、どの治療を行うかを決めていただいています。
義隆院長:
定期的なメンテナンスが可能で、それに理解のある患者さんがもし医院に通えなくなった場合は、私たちが訪問してメンテナンスを行える環境が整っている患者さんにインプラントをお勧めしています。可能な治療は全てご説明・ご提案し、患者さんに決断をしていただいています。
患者さんとのコミュニケーションを大事にしている>
貴院のスタッフ構成を教えてください。また、診療をするにあたってご家族での医院経営が活かされていることはございますか?
義隆院長:
歯科医師が3人、歯科衛生士が4人、受付・助手が3人です。クリニックを開院するにあたって家族でよく話し合って基本理念を決めました。家族それぞれが慣れ合いにならず、常に向上・研鑽することができるよう努めています。
将隆先生:
家族ですから、本当にアットホームな雰囲気で仕事ができていると思います。例えば、担当のドクターが休みであっても、代わりの兄弟の歯科医師が患者さんのことをしっかりと理解した上でのご対応をしています。
また、それぞれ専門が別々の3人の目で診ているため、すぐにセカンドオピニオン、サードオピニオンを聞くことができます。これらの点が、診療を受ける時の患者さんの安心に繋がるというご意見をいただいています。
チーム医療により、安全性の高い治療を
提供しています。
患者さんとのコミュニケーションで心がけていることを教えてください。
義隆院長:
歯科医師と歯科衛生士を担当制にしており、治療とその後のメンテナンスを患者さんと一生お付き合いできるような環境作りを意識して行っています。また、初診の時に問診の時間をなるべく多く取り、しっかりとしたコミュニケーションの時間を取ってから治療に入っています。
将隆先生:
先代院長の父も患者さんとのコミュニケーションを大事にしており、ある意味、患者さん目線を大切にする歯科医師っぽくない人柄が人気の理由でした。初診は特に不安や緊張を覚える方が多くいらっしゃるため、まずは安心していただくことを重視しています。ですから、たとえ飛び込みの方でも、初診で患者さんが一番強く悩んでいることをできる限り解決する、もしくは診査・診断をして次に繋げることを心がけています。
症状・治療についてわかりやすく説明します。
義隆院長:
また、受付でも患者さんの症状を伺っています。
さらに、治療が難しい、治療期間が長くなるケースでは、一生メンテナンスに通っていただきたい患者さんに対して、最初の段階で治療計画とともにコンサルテーションの時間を治療とは別に取るようにしています。
ご不明な点があれば、気軽にご相談ください。
患者さんにとって無理のないご提案で、お口の健康を守る
メンテナンスの時にC(虫歯)とP(歯周病)以外にチェックしていることはございますか?
義隆院長:
虫歯と歯周病に関するリスクの問診や粘膜の疾患、基礎疾患がある場合はそれに関連する全身の変化をチェックしています。また、お子さんに関しては写真を撮って計測し、口腔内全体の観点で歯ならびをチェックしています。
これは、特に成長・発育の段階は重要ですからね。
将隆先生:
入れ歯や咬み合わせのバランスのチェックも絶対に必要です。大きく分けて病気のチェックと機能障害のチェックですね。
患者さんにメンテナンスを継続的に行ってもらうため、どのような工夫をしていますか?
義隆院長:
患者さんの負担にならないような、無理のないご提案をするように心がけています。また、メンテナンスの必要性、行う理由をしっかりとご説明し、理解していただくことが一番重要です。ですから、それは強く意識して取り組んでいます。
将隆先生:
自発的に「健康な状態を保ちたい」と思っていただけるような工夫が必要です。そのためには、押し付けるのではなく、懇切丁寧にご説明することが大事です。患者さんのリスクに合わせた期間やメンテナンス内容、具体的な理由をお話しています。強制的に「絶対来てください」と押しつけるのではなく、当院では診療中や電話でのご予約、または時期を見て担当の衛生士からお電話をさせていただいています。
患者さんに納得していただいた上で、
治療を行っています。
消毒、滅菌で設備費用を投下しているもの、もしくは気をつけていることを教えて下さい。
義隆院長:
体腔内に入るものは確実に世界基準で滅菌された状態で患者さんに提供することを心がけています。ガスや回転器具の滅菌器、オートクレーブ、ウイルスに対する消毒液などを揃えています。また、できるものは全て使い捨てにしています。
将隆先生:
器具は患者さんに使用する直前に患者さんの目の前で滅菌パックから取り出しています。また、当院は患者さんに見られても何も問題がないため、滅菌室にドアがありません。ですから、スタッフの消毒、滅菌に対する意識は非常に高いです。
医師が患者さんの気持ちを考え、理解することが大切
休みの日は何をされていますか。
義隆院長:
月に1、2回、歯周病の研修会のお手伝いをしています。それがない時は、子どもと一緒に宿題をやったり、遊んだりして家族と一緒に過ごしています。趣味はジョギングとスイミングです。
将隆先生:
ジムに行って汗を流したり、ゴルフやフットサルをやったりしています。ちなみに、私たち兄弟は3人とも同じジムに通っています。
文隆先生:
子供と遊んだり、ジムに行ったり、漫画を読んだりしています。ジムに行った後においしいご飯を食べることが何よりのリフレッシュになりますね。
歯科医師になろうと思った動機を教えてください。
義隆院長:
歯科医師である父のパーソナリティー、コミュニケーションを中心とした患者さんへの接し方に憧れ、歯科医師になりました。
将隆先生:
私も家族の影響が一番大きいですね。兄が2人とも歯科大に入学した時に、家族会議で将来家族みんなで医院を開業するのが夢だと父に聞かされ、その考えに共感し、歯科医師になることを決めました。
文隆先生:
私も昔から父の姿に憧れていました。私は歯科医師と教師の両方に憧れていたのですが、父に「歯科医師になって先生の仕事もすればどうか」と言われ、この道を選びました。現在は、歯科衛生士学校や医学部で私の専門である解剖学の講師をしています。
子供の頃の患者としての歯科体験で、現在の臨床に活かしていることはございますか?
義隆院長:
父が歯科医師だったため、学校から帰った後、ずっと父の診療室で過ごしていました。患者さんと親密にコミュニケーションを取るのが父の診療スタイルでした。そのような父の姿を見て、私も患者さんがリラックスして治療を受けていただけるような歯科医師になりたいと思っていました。
将隆先生:
父が歯科医師だったこともあり、子どもの時にむし歯になったことがありませんでした。ですが、親知らずを抜いてもらった時に初めて患者さんの恐怖心を味わいました。
そのような体験から、患者さんにリラックスしていただいた上で、手早く治療をすることの重要性を感じました。医師が患者さんの気持ちを考え、理解することがとても大切ですね。
文隆先生:
私は過剰歯が3本ありましたが、父の治療はとても早かったのを覚えています。2人の兄弟と同様に、患者さんに安心していただけるような治療・ご対応を心がけています。
患者さんの立場に立った治療を心がけています。
歯科大での学びや勤務医時代の経験で、現在の臨床に活かしていることはございますか?
義隆院長:
勤め先で常に撮っていた口腔内写真の撮影のクセがついたことや、矯正治療をずっと学び続けられた経験は今でも活きています。
将隆先生:
大学病院で学んだ難症例に対する補綴処置の技術・経験は現在行っている臨床の役に立っています。実際に臨床を行って一番強く感じたことは、基礎が大事だということです。大学時代の基礎の勉強を学び直し、基礎を大事にすることの大切さを痛感しています。
文隆先生:
麻酔科での経験が、インプラント治療時などの患者さんの全身管理に役立っています。私も基礎の重要性は強く感じていますね。
患者さんに喜んでいただけた分だけ、嬉しい
臨床現場で喜びを感じるのは、どのような時ですか?
義隆院長:
治療計画を立てて治療を行い、その後メンテナンスに移行するという流れを患者さんと共に過ごしていくのが非常に好きですね。難易度の高い症例をしっかりと診査・診断し、それを患者さんにご説明して理解していただき、お互いに満足のいく治療ができた上で、メンテナンスに来ていただいた患者さんと挨拶する時に喜びを感じますね。
将隆先生:
抽象的かもしれませんが、患者さんに喜んでいただけた分だけ、私も嬉しいですね。例えば、患者さんから「食べたいものを食べられるようになった」というお声をいただいた時は、歯科医師冥利に尽きますね。また、スタッフの成長を感じた時やスタッフが活き活きとしている姿を見た時も喜びを感じますね。
文隆先生:
思い描いていた通りの治療ができて患者さんに喜んでいただいた時、また患者さんと日常の些細な会話をしている時に喜びを感じます。
歯科医師のやりがいを熱く語る
義隆院長
最後に貴院の今後の展望展開を教えてください。
義隆院長:
歯科衛生士とともにさらに診査・診断のレベルを上げて、よりスムーズな治療を患者さんに提供できるようにしたいですね。また、治療には患者さんのご協力は不可欠ですから、「本当に治したい」と思っていただけるようなご説明・ご対応を心がけたいと思います。
そして、スタッフが一丸となって今まで以上に精度の高いチーム医療を提供していきたいです。
将隆先生:
時代や地域のニーズに応えていきたいですね。今後、歯科医師も社会貢献の一端を担い、高齢化に対する対応や地域に対して包括的な治療の提供、歯科医師が貢献できる認知症予防、摂食機能の回復、リハビリなどに注力していきたいですね。
文隆先生:
私も2人と同じ意見です。それらに加えて、訪問診療も今後できるだけ行っていきたいと思います。
義隆院長:
地域のホームドクターとして、そしてニーズがあれば日本だけでなく世界でも認められるような先進的かつ高度な治療も提供できるように努めていきます。
私たちと一緒に、お口の中の健康を守り続けましょう。